茶席の掛け軸が読めないことがあります。(文字が草書で判読ができないため。。)文字の省略の仕方は、同じ文字にも何パターンかあり、書き順から導かれたルールがあります。それを知っていないと、省略された文字が読めず、掛け軸が読めないことになります。
しかしながら、文の一部が読み取れれば、全体がわかる場合があります。茶席の床の間にかかっている掛け軸は、禅語が多いので、その中で数文字わかれば、どの禅語なのか予想が可能です。
掛け軸の美しさ(良さ)は、2つあると考えています。
- 言葉(禅語等)がその時期、その場所に合っていて、心に響いてくる
- 墨の跡(筆跡)と余白が美しく、絵画のように鑑賞できる
今、掛け軸の読み方の勉強をしているので、これまでで思ったことを書きます。
画数が足りないけど、成り立つ文字
禅語はたくさんあるので、全てを文字とともに覚えるのは、なかなか難しいです。(私にとって)
3月、お茶室の掛け軸は、
「桃花笑春風」です。
これを見て、読める人は読めるが、私は読めませんでした。
茶室の近くで、漢字練習中の娘のドリルを見たら、「長」の上一本が足りず
「ここに線がもう一本あるんじゃない?」と、漢字の画数の話をしていたら、
「あの掛け軸の最後は”風”という漢字だけど、”風”の中の”虫”みたいなのぜんぜんかいてないよね〜」
と、なり、
「あれ、学校のテストで書いたら点数取れない」
そうそう、点数取れない。なので、掛け軸の楽しみ方は、
- 筆跡の形を見て絵のように鑑賞したり
- 文字を書いた人の気持ちやキャラクターを楽しむ
ですかね。どういうことか考えると、
- 書いてある内容の意味その場にかけられている意味
- 掛け軸の筆つかい(勢いがある柔らかいなど)や、余白の美しさ
- 書いた人のバックグラウンドにある物語
なんですかね。
お茶室に「この掛け軸を掛けよう」と思った亭主も上記のようなことを考えて掛け軸を決めているかもしれません。
なので、お客として招かれた時も、受け止める感性があったほうがより楽しめそうです。素直に「これは何というものでしょうか?」と聞くのもいいと思いますが、より一歩踏み込んでお互いに知ってることを話題にするのも、またそれは楽しいことだと思います。きっと亭主も、お招きする方々の興味、経験、などを考えて掛け軸も選んでいると思うので、それを楽しめるようにできるといいですね。
キース・ヘリングの掛け軸
たいてい、本席(濃茶をいただく部屋)では、禅語が縦に一行書いてある、一行物が使われます。
春にはこの禅語の掛け軸。お正月にはこの禅語の掛け軸。とだいたい季節ごとに禅語が決まっていることが多いです。「禅語を掛ける」という原則があるので、ちょっと不自由かもしれません。その不自由さを、筆跡や構成で退屈しないように表現しているんでしょうね。
以前、雑誌でデザイナーの田中一光さんの茶会の掛け軸にアメリカのアーティスト、キース・へリングの黒いインクをつかった絵が表装されて、つかわれていました。禅語でなくても、
- 掛ける人の意図
- 筆跡の美しさ
- 絵のコンセプトと作者のキャラクター
を選定の基準にした、掛け軸もあるんだな。と思いました。デザイナーが催す茶会というお題だったので、このようにしたのかな。「自分だったら、茶会をどう表現するか」と考えたらこうなった、っていう。田中一光さんだからキース・ヘリングの絵が、しっくりきて、床の間でより輝く様に思います。基本を超えて、自分の土俵に持ってこれるってすごいなー。と思いました。
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