利休百首歌:花入を掛ける釘の位置について詠んだ歌二首

今回紹介する利休百首歌の2つの歌は、茶室を作るときに設置する、床の間に花入を掛ける釘の位置を示したものです。

「花入の折釘うつは地敷居より3尺3寸五分余もあり」

「花入に大小あらば見合せよかねをはずして打つがかねなり」

利休百首歌



花入を掛ける釘の位置は3つのバランスで決まると思います。

  • 茶室主の身長
  • 道具のサイズ
  • 床の間の天井の高さ

歌にある「3尺3寸五分余り」は目安として考えて、あとは、「お客さんからみて美しくみえるように」だと思います。

一つ目「花入の折釘うつは地敷居より3尺3寸五分余もあり」は、床の間の床柱に打つ穴をかける釘の位置を数値でわかりやすく「3尺3寸五分余り」と示しています。

そして、続く二つ目は、持っている花入の大きさに合わせて高さは前後していもいい。「3尺3寸五分余り」決まったことではなく、道具に合わせて、お客さんからみて、美しく見えるバランスで釘を打つといいですよという意味です。


釘の位置は、「バランスさえ良ければ、主のセンスでどこでもOK」ではない事に注目しました。誰かに伝えて、例外なく美しさを表現するための必要なルールとしてあったのが、一つ目の「3尺3寸五分余り」なんでしょうね。そう考えると、利休百首歌は、すべて利休が考えたものではないことが想像できます。私の想像ですが、利休としては、釘を打つ際の心構えとして二つ目を考えていて、一つ目の「3尺3寸五分余り」は、利休の後、茶道を広めたい誰かがわかりやすく作ったルールではないのかなと思いました。

それぞれの歌を読んでみます。

花入の折釘うつは地敷居より3尺3寸五分余もあり

3尺3寸五分余は、約110cmです。家に茶室を作った時に、床柱に花をかける花釘を打ちました。釘の位置決めを当時習っていた先生にお伺いしました。その時言われたのは、


柱の近くで正座をし、腰を浮かして、膝を立てたとき、目の高さより少し上ぐらいのところがちょうどいい。


でした。実際試してみて、その高さを測ってみると大体105cm。膝立ちの高さは、身長差で人それぞれではあるんですが、お茶室の持ち主のサイズに合わせて高さを決める。という考えです。3尺3寸五分余とあまり大きくはなれていないので、安心して釘を打てました。

「花入に大小あらば見合せよかねをはずして打つがかねなり」

こちらは、持っている花入れに高さを合わせるというものです。全体のバランスにより、決めていい。という個人のセンスに頼っています。

花入を作る人が必ずしも茶道具としての花入のサイズを知っているわけではないし、見立て(本来の用途と異なるが、花入として使う)で、使用した場合など、大きかったり、小さかったりします。なので、「バランスで考えて」という一歌もいれたんでしょうね。


花入れが大きいものが多ければ、3尺3寸五分余よりも少し上になるでしょうし、小さいものが多ければ3尺3寸五分余よりも少し下になります。ただ、この歌だと、「釘の位置を大きさに合わせて変えよ」ですが、「今日は大きいのだから上。今日は小さいながら下。」と毎度変えることはできないので、自分の持っている道具と照らし合わせて、大きい花入れが多ければ少し上に、小さめの花入れが多ければ少し下に、で十分だと思います。


また、歌には出てきませんが、床の間の天井の高さのバランスも考えるにも必要ですね。天井が低い場合と天井が高い場合。床の間の全体のバランスとお客さんの目線を考慮すると、いい位置に打てますね。


今回この2首を改めて読んでみて、利休百首歌は、最低限のルールを提示してくれている歌と、各自のセンスで臨機応変にという歌と混在しています。ルールが必要な稽古を始めたばかりの人、センスが養われてきた稽古を積んだ人、両方に読まれるように編集されているから、長く読まれているんですね。







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フリーランスでデザインの仕事をしつつ、週末はお茶のお稽古や、お茶を楽しむ会を実家のお茶室でひっそり開いています。グラフィックデザインと茶道を往来する中で、茶道の知識がデザインに役立ったりしています。
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「花入の折釘うつは地敷居より3尺3寸五分余もあり」

「花入に大小あらば見合せよかねをはずして打つがかねなり」

利休百首歌



花入を掛ける釘の位置は3つのバランスで決まると思います。

  • 茶室主の身長
  • 道具のサイズ
  • 床の間の天井の高さ

歌にある「3尺3寸五分余り」は目安として考えて、あとは、「お客さんからみて美しくみえるように」だと思います。

一つ目「花入の折釘うつは地敷居より3尺3寸五分余もあり」は、床の間の床柱に打つ穴をかける釘の位置を数値でわかりやすく「3尺3寸五分余り」と示しています。

そして、続く二つ目は、持っている花入の大きさに合わせて高さは前後していもいい。「3尺3寸五分余り」決まったことではなく、道具に合わせて、お客さんからみて、美しく見えるバランスで釘を打つといいですよという意味です。


釘の位置は、「バランスさえ良ければ、主のセンスでどこでもOK」ではない事に注目しました。誰かに伝えて、例外なく美しさを表現するための必要なルールとしてあったのが、一つ目の「3尺3寸五分余り」なんでしょうね。そう考えると、利休百首歌は、すべて利休が考えたものではないことが想像できます。私の想像ですが、利休としては、釘を打つ際の心構えとして二つ目を考えていて、一つ目の「3尺3寸五分余り」は、利休の後、茶道を広めたい誰かがわかりやすく作ったルールではないのかなと思いました。

それぞれの歌を読んでみます。

花入の折釘うつは地敷居より3尺3寸五分余もあり

3尺3寸五分余は、約110cmです。家に茶室を作った時に、床柱に花をかける花釘を打ちました。釘の位置決めを当時習っていた先生にお伺いしました。その時言われたのは、


柱の近くで正座をし、腰を浮かして、膝を立てたとき、目の高さより少し上ぐらいのところがちょうどいい。


でした。実際試してみて、その高さを測ってみると大体105cm。膝立ちの高さは、身長差で人それぞれではあるんですが、お茶室の持ち主のサイズに合わせて高さを決める。という考えです。3尺3寸五分余とあまり大きくはなれていないので、安心して釘を打てました。

「花入に大小あらば見合せよかねをはずして打つがかねなり」

こちらは、持っている花入れに高さを合わせるというものです。全体のバランスにより、決めていい。という個人のセンスに頼っています。

花入を作る人が必ずしも茶道具としての花入のサイズを知っているわけではないし、見立て(本来の用途と異なるが、花入として使う)で、使用した場合など、大きかったり、小さかったりします。なので、「バランスで考えて」という一歌もいれたんでしょうね。


花入れが大きいものが多ければ、3尺3寸五分余よりも少し上になるでしょうし、小さいものが多ければ3尺3寸五分余よりも少し下になります。ただ、この歌だと、「釘の位置を大きさに合わせて変えよ」ですが、「今日は大きいのだから上。今日は小さいながら下。」と毎度変えることはできないので、自分の持っている道具と照らし合わせて、大きい花入れが多ければ少し上に、小さめの花入れが多ければ少し下に、で十分だと思います。


また、歌には出てきませんが、床の間の天井の高さのバランスも考えるにも必要ですね。天井が低い場合と天井が高い場合。床の間の全体のバランスとお客さんの目線を考慮すると、いい位置に打てますね。


今回この2首を改めて読んでみて、利休百首歌は、最低限のルールを提示してくれている歌と、各自のセンスで臨機応変にという歌と混在しています。ルールが必要な稽古を始めたばかりの人、センスが養われてきた稽古を積んだ人、両方に読まれるように編集されているから、長く読まれているんですね。







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