お茶の掛け軸にも使われる「円相」「一円相」について書いてみたいと思います。
円相とは、ぐるっと大きい丸を一つ描いてある書。多分どこかで一度は見たことあると思います。
大きな円が表しているのかは、見ている人の理解に委ねられています。
禅の悟りや真理、宇宙。
心の己の心を映す窓。
始まりまもなく終わりのないということで、とらわれないの心。執着から解放された心。
wikipediaより内容を抜粋
大きな意味を削ぎ落とし、一つの円で表現する。ミニマルデザインです。円相を見る時私がしていることと、好きな画家を紹介します。
- 円相を見る時、画家になったつもりで描いて見る
- 円相をまんじゅうに例える画家
円相を見る時、画家になったつもりで描いて見る
展覧会で書の展示品の時にやることがります。それは、展示品の前に立ち、指でなぞる動きをする。です。そうすると面白いことが分かります。
円相の場合一筆なので、書き始めと書き終わりを書から判断して、それに沿って書を書いているように腕を動かします。
たいてい、時計でいうところの7時か6時の位置から始まり、また7時に戻ってくるという形で筆のあとが見えます。以前行った村上隆さんの展覧会での円相は、4時の位置からぐるっと回って書いていました。これをなぞってみると、村上さんて左利きだったのかも?とか画面の右どなりに墨を置いていて、書き始める前、紙にたれてしまうのがいやだったのかな?とか、絵に関係ないことまで考えてしまいます。また、同じ円相でも、12時の上から始まると現代では0になってしまいます。でも、12時の位置からの円相に私はまだ出会っていません。
指でなぞれない円相もあります。以前没後200年を記念した松平不昧の展覧会(2018年)を見に行った時に、雪舟の一円相が展示されていました。それが、筆の始まりも終わりもわからない一定の太さでかかれた直径35cmくらいの円相。コンパスで書かれたような正円で、筆跡の太さも一定でした。周りの曲線と抑揚のある書たちと比べてもとても異質なものでした。
現代ではコンパスもコンピューターもあるので、簡単に正円を自由な大きさでかけます。しかし雪舟の円相は、当時ではあまり見かけないほど正確な円だったんではないかと思います。そんな正確な円を書いてなにを表現したかったのですかね。私はこの正確な円をみていて、満月が思い浮かびました。
そんな円相を秋の月や茶菓子と例えた画家がいます。仙厓です。
円相をまんじゅうに例える画家仙厓
その画家は、仙厓 義梵(せんがい ぎぼん)です。
江戸時代の福岡のお寺の住職で画家です。彼の描いている絵がとても好きです。出光美術館にコレクションが存在するので、公開されているときには是非行きたいです。
出光のコレクションから好きな絵を紹介します。ウェブサイトのリンクを貼ります。リンク先は出光美術館のサイトです。
○△□ (まるさんかくしかく)
http://idemitsu-museum.or.jp/collection/sengai/sengai/03.php
まるさんかくしかくは、どう解読するのか解っていません。スペインの画家ミロは日本美術が好で本などを資料として収集していました。その本の中にも、丸三角四角をモチーフにした書が書かれている本がありました。(渋谷のBunkamuraミュージアムの「ミロ ー 日本を夢見て」で展示されています)ミロが持っていた資料が仙厓かどうかは不明ですが、記号を書として描く自由な発想に共感したのかも知れません。
一円相画賛
http://idemitsu-museum.or.jp/collection/sengai/sengai/04.php
これを、茶菓子とおもってたべよ。って面白いですよね〜。出光コレクションではないですが、円相を秋の月に例えた書も描いています。円相は真理からおまんじゅうまで何にでも例えられることが、この世の一切なのかもしれません。
まとめ
円は、文字ではなく記号なので、外国のインテリアでも壁にかけられているのをよく見かけます。昔から現代まで、たくさんの画家がモチーフとしています。ひとつの円が真理、全宇宙の象徴となっているのはとてもシンプル。日本の代表的なミニマルデザインですね。