先生は、炭がよく燃えて美しい様子を見て「ご馳走ね」と表現していました。
ご馳走とは料理などに使う言葉ではないのかな?と調べてみたら、
豪華な料理を表現する以外にも、
心を込めてもてなすこと
という意味もあります。
ちょうど良い湯加減で、客がお茶が飲めるように炭を準備する。
その気持ちの込め方と手間を考えると、茶室で炭が燃えていることは、まさにご馳走です。
去年、先生の茶室では炉が炭から電気で使えるようにリフォームされました。
茶室に炭の炎があることが、どんなにありがたいことなのか、
それを最近実感したので書きたいと思います。
- 炉の炭が燃えているのを見られることはご馳走
- 炭の準備の手間
- 炭でも、電気でも、もてなしの心が大切
炉の炭が燃えているのを見られることはご馳走
炉に炭を入れて、火が灯ると本当にきれいなんです。
菊炭といって、炭の断面が菊の花びらのようになっているものを使います。炭の中に火がつくと中から赤くなり、黒い木の肌と真っ赤な炎の光。
先生はよく、炭手前の後のお点前の時に炉の茶釜の下を覗きこみ、
「よく火が起こったからみてみて、きれいでしょ」
「これが茶室でのご馳走の一つよね」
とよく仰っています
その時は、何度か見せていただいているので
「本当に今日もきれいな炎だな〜」
とあたりまえのように思っていました。今となっては、手間と時間をかけて準備をしていただいていたから、見られた光景だったんだと気がつきました。
炭の準備の手間
茶道は手間がかかることが多いです。お点前を覚えることが多い、道具の種類が多様であるなど。その中で私が一番手間がかかると思ったのは、炭の準備です。
以前先生のお宅で灰を担当しました。初夏の日に集まり先生のお宅で灰をつくりました。半年先の炉の時期に使う灰です。三人で四時間くらいかかりました。作ったときの例を書きます。(もしかしたら、すごく省略して書いてしまっているかもしれません。なので、本来ならばもっと手順があるはずです。)
炭の準備の例
- 炭を炉に入れるサイズに切る
- 切った炭を水で洗う
- よく乾燥させる
灰の準備の例 ※灰は湿っているものと乾いているものがありますが、私が準備したことがある湿し灰を例にします。
- 灰をふるいにかけて炭のかけらなどを取り去る
- 灰に煮出した番茶を手で混ぜる
- 番茶で湿った灰をふるって粒を細かくする
- 乾燥しないように大きなバケツにビニールで蓋をして半年保管する
炭と灰は準備だけでなく、稽古あとの片付けもあります。燃えた炭を取って、火を消したり、散らばった灰を掃除したりします。ここまでは、弟子たちが担当しますが、先生は弟子たちが帰ったあとにもいろいろ片付けをしていたと思います。そのおかげで、あの炉の黒い炭が燃える赤い炎を拝見させていただいていました。
炭でも、電気でも、もてなしの心が大切
私の家の茶室もマンションなので、電気式の炉をつかっています。
なので、上記のような炭や灰はいりません。
もちろんお茶のお点前自体は炭だろうが電気だろうが変わりません。
電気の熱源が炉に入っているので、炭手前はできませんが。。
炭と電気で熱源が違っていても、もてなす心を、炭とは違う形でお点前で表現できたらいいですね。
お客さんに「ご馳走」だと思ってもらえるお点前を目標に。
それには、手間と稽古の時間を惜しまずに、もてなす心を忘れないようにしたいです。