今回はお茶のお点前を行う際、亭主の両腕の位置について書こうと思います。両腕の位置というのは、帛紗を捌くとき、柄杓を構えたり、道具を持ったりする際の、亭主の腕の形のことです。基本のポーズといってもいい、腕の位置について書きます。
お点前をする際は、基本的に肘を体から少し離した状態にします。その状態をキープする理由を考えました。以下3つから説明します。
- 肘を体につけてお点前をすることは、なぜよくないか
- 体から肘を離す場合の腕の形をイメージする言葉
- 体から肘が離れていることで、次の動作にすぐ移れる形になる
肘を体につけてお点前をすることは、なぜよくないか
肘が体から離れていたらお点前がかっこよく見える、の反対、肘がぴったり体についていたらどう見えるかを考えてみます。
肘が体にぴったりついていると手首だけでお点前をすることになります。それはお客さんから見ていると、お点前が小さく見えてしまいます。道具は棗、茶杓、といった大きさの小さいものあり、それを手首の動きだけで扱っていると、どうなるでしょうか?
お点前一つ一つの動きが、早く終わってしまいます。
なので手首だけを動かすお点前はゆったりと見えません。ゆったりとした時間を演出するという茶室での立ち居振る舞いを考えると、肘を体から離して、大きく動かすお点前をして、時間がゆったりと見えるようにしたいですね。
体から肘を離す場合の腕の形をイメージする言葉
私が今までお稽古をしていた中でよく聞いていた腕の位置の目安3つです。
- 脇に拳が挟めるくらい
- 脇に卵が挟めるくらい
- 丸太を両手で抱きかかえるイメージ
1つ目と2つ目は同じ意味ですね。卵とこぶしはだいたい同じくらいなので、その大きさを挟んでいるような感覚でお点前をしなさい、と習いました。今となっては、卵よりも拳と伝えた方がいいんじゃないかなと思います。卵は大きさは一つです。大人、子供、男性、女性で体の大きさも違うので、卵の一つ分だと、それだと小さ過ぎ、十分に肘がからだから離れない人も現れてきます。その反面、自分の拳だと、その人の体格にあった大きさの空間を脇につくるイメージが理解しやすいです。
三つ目は道具を持つときは、いつでも丸太を自分の前に抱えてるようなイメージを持つというものです。
丸太の太さは成人女性だと直径約40cmを想像してください。自分の前に腕で円をつくって指先がおへその高さで、合わさる感じです。単に肘を体から離すのではなく、指をちょっと前に出す感じが、「丸太を抱きかかえる」という表現で実現できます。
体から肘が離れていることで、次の動作にすぐ移れる形になる
体から肘が離れている形を見ていると、クラシックバレエの腕のポジション「アン・バー」とイメージが重なりました。この丸太を自分の前で抱えるような腕の形、バレエでも良く見ませんか?
それは、腕のポジション「アン・バー」です。バレエダンサーはどんな時でも肘が体からはなれていますよね。その形が美しいのと、次の動きに移る時にスムーズに体が動くためです。いつでも次の動きができるように「準備OK」にしているんですね。
そう考えると、お茶のお点前をしている亭主も、いつでも次の動きに移れるようにしているのではないでしょうか。また、その形が美しいのも、共通しています。
大げさですが、点前座を観客(客)から注目を集める舞台とかんがえるのなら、バレエとの共通点も頷けます。
まとめ
お点前をする際は、基本的に肘を体から少し離した状態にしたほうが機能的で美しいです。その理由を以下3点から考えました。
肘が体についてお点前をすることは、なぜよくないのか
肘が体についていると、お点前が小さく見えてしまう。お点前は動きが大きいほうが、ゆったりと演出できる。
体から肘を離す場合の腕の形をイメージする言葉
自分の拳、卵を脇に挟むイメージ、丸太をかかえるイメージ、など状況をイメージする
体から肘が離れていることで、次の動作にすぐ移れる形になる
クラシックバレエの腕のポジションから、次の動作への準備と美しさを兼ねている形と考えられる
肘を体から離す形は、洋服でお点前のお稽古をしていると、日常生活と異なり、見た目に違和感を感じます。しかし、腕に袂がある着物でお点前をすると、違和感がありません。着物の袂が綺麗に見えます。
自分の前に丸太をイメージしてもいいですし、バレエの「アン・バー」を思い出してもいいです。ぜひ肘を体から離してお点前をしてみてください。