サントリー美術館で2021年10月31日までやっている「刀剣 もののふの心」に行ってきました。戦で使う際の、薙刀や日本刀、また、神社に奉納する刀やお祭りで使用する刀が展示されていました。
「戦い」にまつわる刀、「儀式」にまつわる刀、絵画や甲冑など、刀の周辺のことを詳しく見られる展示でした。
刀自体の緊張感のある美しさもさることながら、私は刀本体以上に、拵(こしらえ)に興味を持ちました。拵(こしらえ)とは(私はこの展示で知りましたが)、鞘鍔柄など刀を携帯するために、刀身を包む物全体のことです。拵は、実用的に刀を携帯しやすくする、ことと、武士の美意識を表現する機能を持っています。
拵の作りが緻密で美しかった
刀の鞘や鍔など、小さい面積の中でも、とても繊細な装飾が施されていました。鞘の幅の狭いところに、螺鈿で花や幾何学模様が入っていたり、幾何学模様も緻密で正確な直線だったりして「裸眼で作業できたのかな?」と思うほど細かい装飾です。刀を構える時に握る、柄の部分、芯は木で作り、そこにサメの皮を貼り、それを組紐のようなものでぐるぐる巻きにしています。紐でぐるぐるにしている理由は、手が滑らないようにだと思うんですが、紐を捻ってサメの皮がチラっと見えたり、紐の一部の間から、金属でつくられた花が見えたりと、本当に細部にわたり、妥協のない装飾でした。
鞘、鍔、柄まわりの見た目だけのコーディネートだけに止まらず、拵全体の装飾がストーリーから作られている、ということが知れたのも面白かったです。そのストーリーももっと教養があったら、より深く持ち主の心がわかるのに、ほぼわからず、まだまだ勉強がたりないなと思いました。ストーリーを作った人に近づけるだけの教養がないと、その意図を理解できませんね。。とほほ。。
様々な分野のプロフェッショナルが作る一つの拵
拵は、木工、漆、組紐、金工、など様々な技術が集まった作品だとおもいました。数人の職人の手にかかり仕上げられたんでしょう。ということは、拵の全体のディレクションをした人は刀の所有者ですね。刀身は刀鍛冶、研師で製作され、それを入れる鞘、鍔、などは、持ち主が自分の作りたい美意識を職人に伝え、オーダーして製作したのだと思います。拵は、刀を持ち歩くために必要なものですし、刀身よりも人の目に入るのは、鞘、鍔、柄です。それを、自分にふさわしいデザインにすることが、大切だったのでしょう。
武士は剣の鍛錬が最も重要だったと思うのですが、そのうえ、刀の拵のディレクションをするとは、なかなか大変ですね。でも自分が戦に出るとき、自分の思いを詰め込んで作ったもので戦いたいという強い気持ちが感じられました。
お茶道具には、さまざまな分野の職人が一つの道具を作り上げるというのはあまり見たことがありません。道具自体が用途が決まっていて、単一の機能しかもっていないからですかね。今回の展示では、いろんな技術が集まって製作された物はどうやってつくっているのか、考えるきっかけになりました。
この展示の最後の方にも、刀や甲冑を作る際に必要な技術を持った職人たちの生活が描かれた絵がありました。生き生きと描かれている職人の様を見ていると、展示されていた作品を、昔の人が本当に手で作っていたんだなと実感できました。
コメントを残す