以前、行った出光美術館の
「やきもの入門 ― 色彩・文様・造形をたのしむ」
https://www.museum.or.jp/report/1259
この展示をみてから気になっているのは、お茶道具に使われている陶磁器、茶碗、水差し、蓋置き等の白地です。たいていは、「やきものの絵が季節の何を示しているのかな?」と、絵の部分にばかり注目ていましたが、今回の展示をみて気になったのは、下地です。
陶磁器の白地は、色と表面のテクスチャが微妙に違っていて、それにより作品の雰囲気が変わってきます。私的に大きく分けると、
- スーパーホワイト(真っ白)、ちょっと青っぽい白 & 光沢のある表面
- 少し黄色味がかった象牙アイボリーのような白 & 軽く凹凸のある表面
色味を電気で表現すると蛍光灯と電球。表面を紙で表現すると光沢紙と画用紙といった感じでしょうか。
下地の色がちがうと絵の見え方が違います。絵のついている器は、下地になる色と表面のテクスチャの雰囲気に合わせて意匠を考えていると思います。
それは、印刷物をデザインするときの紙選びのようですよね。
磁器の柿右衛門と陶器の京焼
磁器の柿右衛門と陶器の京焼
柿右衛門に代表される磁器。1600年代にヨーロッパで人気が高く、輸出され、貴族たちに好まれました。
柿右衛門 色絵花鳥文八角共蓋壺
http://idemitsu-museum.or.jp/collection/ceramics/japanese_ceramics/04.php
赤、青、緑の色の発色の良い絵柄、完璧な白と光沢のある下地。華やかな表現も色鮮やかに作ることが可能だっと思います。それが、ヨーロッパの人々の美意識にマッチしたんですね。印刷をするときの紙でも紙によって、同じインクの色でも見えかたが変わります。多くの場合、表面に凸凹がないほうがインクの発色が良く、色が鮮やかに見えます。
もう一つ、京焼に代表される陶器。柿右衛門の磁器とは反対に、国内の富裕層向けの作品が多かったようです。京焼にもいろいろありますが、この展覧会で展示されていたのは、
野々村仁清 色絵鳳凰文共蓋壺
でした。暖かみのある黄色味の白、凹凸のあるような陶器はまるで高級な水彩画用紙の感じです。柿右衛門の磁器と比べても、落ち着いた色味が魅力的です。
野々村仁清の壺は図柄が描いてある面積が多いですが、柿右衛門の壺は余白を活かす意匠になっています。焼き物の手法による特徴を生かした意匠を採用しています。
名刺をデザインする時の紙選び
紙選びでよく悩むのは、名刺です。名刺は持つ人や会社を表現する重要なツールです。
名前のレイアウトやロゴマークのデザインが、紙質とバッチリ合わせたいですよね。発注されて、業種やターゲット層を考えて、まず紙選びから始めることもしばしばあります。紙の特徴により、ロゴマークの発色、フォントの細さなど、デザイン要素を決めることもあります。そう考えると、焼き物の下地の白の活かし方も同じような感じだと思いました。
- ターゲット層の好みを考える→華やかなのが好み or 落ち着いたのが好み
- 下地の特徴を見極める→高級感のある紙なら余白が綺麗に見えるように or 全体にデザインを施して紙の悪さをカバーする
有名作家の陶磁器と自分の仕事を比べるのもなんですが、自分と似ている所を見つけてみると、作家の考えがちょっとわかった感じがして、面白いです。
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