これから数回に分けて千家十職(せんけじっしょく)について書きたいと思います。数か多いので、覚えるのに大変です。その覚え方を数回にわたって考えます。今回は、
千家十職とは?
どんな道具を作っているの?
を、自分が分わかりやすいように簡単にまとめました。カバーしきれていないこともあります。全体をおぼえるために「ざっくりまとめ」です。
平成28年に日本橋三越で開催された展覧会「茶の湯の継承 千家十職の軌跡」の図録を参考にしています。
千家十職(せんけじっしょく)とは、茶道に関わり三千家に出入りする塗り師・指物師など十の職家を表す尊称である。
wikipedia より
平たく言うと、「茶道で使う道具を代々製作している職人」です。利休の目指す茶の湯に合う道具を、利休と協力して作った職人集団です。その時代から現代にまで代々続いています。
茶道初心者の時から千家十職を覚え始めると、稽古で使う言葉の意味がよくわかり、道具への理解進みます。お稽古を始めてまず覚えるのが、この十の家の名前です。
茶道具で作者の名前として頻繁に目にします。これらが頭に入っていると、お稽古でお道具拝見の時、また、美術館で茶道具を見るときにも使えます。これを知ることで道具の形の特徴だけでなく、400年前から代々の時代軸も合わせて楽しめると思います。
千家十職のしごと
千家十職のしごとは大きく2つあります。
1)「利休好み」「利休形」という利休が当時作り上げた形を、忠実に後世につたえる
2)当代家元が考えた、時代に必要な新しい形をともに、作り上げる
それぞれについて説明します。
1)「利休好み」「利休形」という利休が当時作り上げた形を、忠実に後世につたえる
「〜好み」「〜形」を、英語で説明するときは、「Style(スタイル)」を使います。利休好みを英語で言うと、「Rikyu style」です。
モデルさんや芸能人の方が自分の好きな身の回りのものを紹介したりするとき、「〇〇スタイル」といって、雑誌や動画で紹介していますよね。「好きな形のバッグ」と純粋に色や形が気に入ってるというだけでなく、自分の求める自分像、生活上の使用用途に合っているかを見極めて、「好きな形のバッグ」としています。
「自分の求めている全体の雰囲気はこうだから、これを選んだ」
という表現のほうが「スタイル」という言葉にはふさわしいのかもしれません。なので、「利休が好んだ形」は、「利休がめざした茶道(全体像)にとても合う形」と言い換えることもできます。
2)当代家元が考えた、時代に必要な新しい形をともに、作り上げる
千家十職は、その「好み」を代々伝えています。また、利休だけでなく、新しい代の家元が考えた「好み」の道具もあります。
玄々斎好み 点茶盤:
1872年の京都博覧会のとき、裏千家11代玄々斎が考案した立礼のお点前ができる点茶盤です。テーブルと椅子で薄茶のお点前をができ、正座をしない外国人の方のためにかんがられた道具です。この点茶盤に「玄々斎好み」があります。
圓能斎好み 長盆:
数年前の新型インフルエンザ、現在のコロナで使われた「各服点(かくふくだて)」というお点前があります。濃茶を一名一碗の各服に点てるお点前です。通常濃茶は、1碗の茶を数名で回し飲みをします。それができない間に使うお点前です。これは、1911年に裏千家13代圓能斎が考案したお点前です。そのお点前では、お客さん(次客以降)の数と同じ数の茶碗を乗せる長盆を使います。この長盆は、それまでのどの点前でも使わなかった新しい道具です。この長盆に「圓能斎好み」があります。
このように、それぞれ時代に合わせて必要になった点前で使う道具も制作してきました。これからも新しい時代には、新しい道具が生まれていくんですね。
十職のそれぞれの仕事
十職は、その名の通り、10の種類があります。その分け方は、
扱う素材で分けられている。
原則は扱う素材で分けられています。制作する茶道具で分けられてはいません。例外として、釜師と茶碗師は茶道具で分けていますね。しかし、茶碗師でも茶入を作っていたりします。
以下千家十職を表にまとめてみました。
製作道具の一例 | 家名 | 手法や見た目の特徴 | 当代 | |
土風炉・焼物師 | 茶碗、水指、香合、香炉、花入 | 永樂家 | 楽焼以外の焼き物の道具 | 17代 善五郎(ぜんごろう) |
釜師 | 釜 | 大西家 | 16代 清右衛門 (せいうえもん) | |
表具師 | 掛軸、風炉先屏風、紙釜敷、襖、衝立 | 奥村家 | 13代 吉兵衛(きちべえ) | |
竹細工・柄杓師 | 柄杓、茶杓、台子、香合 | 黒田家 | 竹を使って作られた道具 | 14代 正玄(しょうげん) |
指物師 | 箱、棚、お盆 | 駒澤家 | 木地がわかる道具が多い | 14代 利斎(りさい)以降空席 |
袋師 | 仕覆、帛紗、糸組 | 土田家 | 組紐を使って編んだものも作成 | 13代 半四郎(はんしろう) |
金もの師 | 風炉、釜、水指、建水、蓋置 | 中川家 | 金工の手法、鋳金、鍛金、彫金、鍍金などの手法を使った製作を監修 | 11代 浄益(じょうえき)以降空席 |
塗師(ぬし) | 棗、炉縁、香合 | 中村家 | 漆塗りで、一閑張細工よりも、つるつるな表面 | 13代 宗哲(そうてつ) |
一閑張(いっかんばり)細工師 | 棗、香合、盆、炭斗 | 飛来(ひき)家 | 張り子のように和紙で形作りその上に、漆や柿渋を塗る手法。和紙の下は、竹、木、粘土などで土台がつくられている | 16代 一閑(いっかん) |
茶碗師 | 抹茶茶碗、茶入れ、水指 | 樂(らく)家 | 16代 吉左衞門(きちざえもん) |
次回は、家の名前と製作している道具を関連をどのように覚えるかを考えます。
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