茶を点てる時、湯と水での音の違いを感じてみる

夏になると、水の音が心地よいですよね。茶杓の銘でも使われる、今の時期の季語でも「水音(みずおと)「水の音(みずのおと)」など音に関連する語もあります。今回は、お抹茶を点てるとき、お湯を茶碗に入れる時の音と、水を入れる時の音の違いについて書きます。


「水と湯の音の違い」は日常生活では聞き分けようとも思わないほど、取るに足らない違いです。お茶をしている時には、そんな音に注目してみます。いつもは使っていない感覚が澄んでいくようで心地いいです。日常との視点の違いを発見することも、お茶の楽しさなのでぜひ試してみてください。

コンテンツ
  • 水の音と湯の音はどんな音
  • 茶釜で水が沸騰する音「釜の六音(かまのろくおん)」

水の音と湯の音はどんな音

茶室は静かです。大抵、車や電車の外からの音、スピーカーから流れる音楽もしていません。聞こえる音は、

茶室中で人が動く音、
道具を使うときの音、
必要な会話

です。外部からの音であふれていない場所で聞き分けられるのが、湯と水の音です。音を聞き分けるチャンスは、

柄杓から茶碗に水や湯を注ぐ時

です。

常温の水を入れた時は、チョロチョロと高い音
釜のお湯を入れた時は、トポトポと低い音

水のときのが最も高い音で、明るいクリアな音です。
温度が高いと、すこし篭ったような音です。


この音の違い、お客さんでお点前を見ている時も楽しめます。この音の違いを楽しむお点前が、夏のお点前の「洗い茶巾」です。水屋でお茶碗に水をあらかじめ入れて、そこに茶巾など道具を組みます。お茶を入れる前、お点前の最初の方で、茶碗をからにはするため、茶碗の中の水を建水に流します。そのときの水音が涼しさを感じさるという演出です。

この洗い茶巾のお点前のとき、建水の材質は「唐銅(唐金)」という金属製のほうが水音がよく聞こえます。音を聞かせる演出が必要ならば、それをより実現させる道具を取り合わせます。季節感など見た目だけでなく、音の演出の視点でも考えるんですね。

茶釜で水が沸騰する音「釜の六音(かまのろくおん)」

お茶で使うお湯は、茶釜で水から炭の火で沸かします。お客さんがいる場で、炭を入れて、水の入った釜を据えます。茶室にいる全員が、湯が沸いていく時間を共有します。この徐々に湧いていく湯の様子を表した言葉があります。それが

釜の六音 かまのろくおん

千利休の言葉です。
釜が湧いていく経過を、6つの音で表しています。釜の中の湯の様子を表す言葉が、自然から連想されていて面白いです。

「魚眼(ぎょがん)」魚の眼のような大きな泡
「蚯音(きゅうおん)」土の中から聞こえるミミズのなき声のように小さい音
「岸波(きしなみ)」遠波よりも大きく水面の波打つ様子
「遠波(とおなみ)」遠くで水面が波打つ様子
「松風(しょうふう)」植物の松の間に風が通り過ぎるサーという連続した音
「無音(むおん)」静かな様子

その中で、釜で湯が湧いている音を表しているのが、この5つ

「蚯音(きゅうおん)」土の中から聞こえるミミズのなき声のように小さい音
「蟹眼(かいがん)」カニの目のような小さな泡が立ちちいさいコロコロという音
「連珠(れんじゅ)」連なる珠のように泡が連続して底から湧くことコロコロいう音
「魚目(ぎょがん)」魚の眼のような大きな泡がでてゴロンゴロンいう音
「松風(しょうふう)」松林の間に風が通り過ぎる様なサーという連続した音

この5つの音の中で、お抹茶を点てるときに一番ちょうどいい温度が「松風」
と言われています。
これらの釜の音は、釜鳴(かまなり)といって、音がなるように釜に仕組みがあります。茶釜の中、底に付けられたの薄い鉄片により音が鳴ります。
なので、家のヤカンで試してもこの心地いい音はなりません。残念ですが。。


お茶室でお茶をいただく機会があったら、道具の見た目だけでなく、湯と水の音にも注目してみてください。日常からは遠くはなれた視点の違いを楽しめますよ。







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Ria
フリーランスでデザインの仕事をしつつ、週末はお茶のお稽古や、お茶を楽しむ会を実家のお茶室でひっそり開いています。グラフィックデザインと茶道を往来する中で、茶道の知識がデザインに役立ったりしています。
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