「一期一会」と「一座建立」は、楽しみ方のヒント

お茶の稽古の中でよく聞く言葉、
2つの言葉。これら言葉のなかに、お茶の楽しみ方のヒントが入っています。

一期一会(いちごいちえ)
一座建立(いちざこんりゅう)

意味は、

一期一会:一生に一度しかないこと
一座建立:ホスト側もゲスト側も含めて同席者全員で心地よい場を作り上げること

です。これらの言葉を自分なりに説明したいと思います。

一期一会(いちごいちえ)

一期一会と言われるように、「その時一度だけ、ゲストとホストが一緒になって場を楽しむ。」と聞くと演劇や音楽ライブなども想像できますね。舞台に立つ役者さんや歌手が一方的に楽しみを提供しているのではなく、お客さんの反応やその場の雰囲気などの相互作用で盛り上がったりします。では、その場にいなかった人も映像で楽しめるでしょうか?

舞台は、映像で撮影したものを見ても楽しめます。
その場にいなかった人でも、映像を見れば概ね、ストーリーと演出で舞台の面白さは伝わります。

音楽ライブも映像で撮影して楽しめます。その場にいなかった人でもライブならではのアレンジされた演奏や選曲や曲順でその日ならではの演奏が映像で見られます。

変わって、お茶はどうでしょう。

茶室の様子を撮影したものを後から見て、そこの場にいなかった人が、その場にいた人と同じようにとまではいわなくても、少しでも楽しめる。ということはあまり考えられません。

では、ライブや演劇とどこが違うか。その大きな違いの一つは、

茶道は視覚・聴覚にプラスして、触覚・嗅覚・味覚を使う

です。

音楽や演劇の映像では、演者の声、動き、曲のアレンジの仕方、ストーリー、衣装や舞台の演出を視覚聴覚を使って理解し、楽しみます。

茶会では、視覚・聴覚に加えて、触覚・味覚・嗅覚を使って理解します。道具の形や絵、書、お花、お菓子の形などは視覚で、釜の煮える音、会話などは聴覚で。それに加えて、お香の匂い、道具の手触り、お茶の味、お菓子の味など、触覚・味覚・嗅覚を入れた全ての感覚を使ってその場を理解します。

その匂いの中に、味の中に、手触りの中にも楽しみがあります。なので映像で捉えることはできません。どういう道具を使って、どんなお菓子で、どんな話がされていたかの記録として映像で残すことはできます。しかし茶会に参加して「良かった」「楽しかった」と思える感動をその場にいなかった人が感じることは難しいですね。

「この時のその場を楽しむ」五感で感じた面白さは、映像には残りません。そう考えると、一回一回が二度と来ない、一期一会という言葉がふさわしいですね。

一座建立(いちざこんりゅう)

一座建立は、ホスト側もゲスト側も含めて「同席者全員で心地よい場を作り上げる」ことです。皆が楽しんでもらえるためには、ホストとゲスト両方で勉強が必要です。この両方をお茶でお稽古をしています。

楽しませるため:ホスト(亭主)側の勉強
楽しむため:ゲスト(お客)側の勉強

ゲストはホストの立場を慮る必要があるので、ホストの勉強をします。これが、お茶の点て方などお点前の練習です。同じように、ホストはゲストの立場を考える必要があるので、ゲストの勉強もします。これがお茶のいただき方の練習です。

ホストは、その場を楽しめる場にするために、お点前の手順だけでなく、趣向(演出)を考えます。
では、ホストの技術と知識を最大限に盛り込んだ最高の茶会を目指すべきでしょうか?それもその場にいて「知らなかったことが知れて楽しい」となるかもしれませんが、その場にいる人たちに向き合った茶会であることのほうがいいでしょう。
その場にいる人たちが、後々に「すごく良かった」「印象にのこった」と思い出して、「あの時は楽しかった」と言われるような茶会を作るのが目標です。自分の技術や知識の発表の場ではなく「同席者全員で心地よい場を作り上げる」を大切にしたいです。

全くお茶をやったことがないのに、茶会に呼ばれたからどうしよう・・・

と思うかもしれませんが、ホストであったならばお客さんが未経験者だというのをわかっています。(大抵お茶室に呼ばれる時には、準備もあるので、誰が来るのかをホストが自分で招待していることが多いです。)
なので、緊張せずに「いまここにいる人と時間を楽しもう」と考えてはいかがでしょうか。未経験者を茶室で困らせたいホストはいません。困ってしまうような経験者用の難題をだしたかったら、それが可能な別の人をゲストとして読んでいます。そうしたほうが、お互いが楽しめますよね。


お茶室でお茶をいただくことは、一期一会の機会に、一座建立の気持ちで「いまここにいる同席者たちと時間を楽しむ」体験です。機会があればぜひ参加してみてください。







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