茶道では、香をたきます。香の香りを感じると、「これからお茶だ!」と気持ちが切り替わります。
5月から風炉になりました。風炉で使われる香は、香木(こうぼく)です。字のごとく香りのする木材で、それを1cm角ほどに小さく切ったものを使います。
4月までは、炉で使われていたのは、練って作る練香(ねりこう)です。
お稽古で「風炉のときは香木、炉のときは練香で」と教わりました。風炉と炉でお香の種類が変わるのは、なぜなのか。「昔から決まっているのだから。」ではなく、自分なりに答えを考えました。
私の答えは3つ
1)季節の違いを感じるため
2)練香は自分好みの香りに調合できるから
3)日本で作れる香だから
です。詳しく書いていきます。
- 香木の種類
- なぜ香木/練香と、使うお香を変えるのか
- 香合(お香の入れ物)の違い
香木(こうぼく)の種類
香木は、いい香りのする木です。常温で香りがする木(白檀びゃくだん)と、加熱されて香る木(沈香じんこう)があります。
練香(ねりこう)は、様々(香木やムスクと呼ばれる麝香など)な香りの粉末で好みの調合し、炭や貝の粉、蜂蜜などで練り、小指の先ほどに丸めたものです。
沈香の名前:伽羅以外は産地の名前を漢字で表していると覚えられます。
伽羅(きゃら) | 産地の名前ではなく最上級の沈香は伽羅と呼ばれる |
羅国(らこく) | シャム国。現代のタイ |
真那賀(まなか) | マラッカ |
真南蛮(まなばん) | インド東海岸のマラバル |
寸門陀羅(すもたら | スマトラ |
佐曽羅(さそら) | インドネシア |
なぜ香木/練香と、使うお香を変えるのか
私が考えた答えは3つ
1)季節の違いを感じるため
2)練香は自分好みの香りに調合できるから
3)日本で作れる香だから
です。1番から書きます。
1)季節の違いを感じるため
茶道では季節感を大切にします。移り変わる季節を五感で感じる。花や道具からは「視覚」で季節の移ろいを感じます。その中で、香りは五感の「嗅覚」を使います。半年ごとの大きな季節の移り変わりを、香りで感じさせるのが理由なのではないでしょうか。
何年もお茶を続けていると、5月のお茶室での白檀の香りで、「ああ、今日から風炉だな、夏が来るな」と感じます。11月に練香の香りで、「今日から炉だな。今年もあと一ヶ月だな」と一年の終わりを感じます。
2)練香は自分好みの香りに調整できるから
練香は、香木の粉末を含む数種の香料を組み合わせて作ります。平安時代に貴族はオリジナルの香りのする練香をつくって、自分らしさを表現していました。貴族の家には秘伝で伝わる数多くのレシピが存在していました。それらが、時を経るごとに淘汰され、基本のレシピは六種になっています。
「自分の表現として香りを調合する」ことで、お茶室では亭主の自分なりの季節感を表現していたのではないでしょうか。風炉の季節、香木ではできない表現を広げるために、炉では自分で作る練香を採用したのではないでしょうか。
3)日本で作れる香だから
桃山時代には、外国からの茶道具(唐物)だけではなく、日本でつくられた国産の茶道具が使われるようになりました。香木は外国産です。練香は原料は外国産ですが日本でつくられた香として、使っていたのかもしれません。
香合(お香の入れ物)の違い
お香の種類により、使われる香合の素材が変わると覚えると便利です。
季節 | 香の種類 | 香の数 | 香合の素材 |
---|---|---|---|
風炉(5月〜10月) | 白檀、沈香 | 3つ | 木(漆器、木地) |
炉(11月〜12月) | 練香 | 1つ | 陶器 |
通年 | 金属、貝 |
香木は乾いている木なので、漆器、陶器などどんな素材の香合にも入れることができます。しかし原則的には漆器、木地のものに入れます。変わって、練香は、はちみつなど水分を含んでいるもので練って調合しているので、湿っています。なので、陶器にいれることを原則としています。
金属や貝はどの季節でも使えます。この素材の香合に、練香を入れる場合は、練香と香合の間に椿の葉を置きます。それは、練香の成分で金属や貝を変質させてしまわないようにするためです。
お香を入れる数
風炉では、香木をなぜ三つ入れるか。2つは使って、一つは香合の中に残します。なぜ一つ残すかというと、香木を火箸でつかむときに、香合の底に当たらないように、香合の底と香木の間に隙間を開けるため、台の役割をしていると聞いたことがあります。
香木を使う時、白檀か沈香か
風炉の季節には、白檀が使われることが多いです。白檀は燃えた時に油が出ません。しかし沈香は熱が加わると油が出ます。沈香は、木が虫食いなどでダメージを受けた時に、みずから修復する際に出る樹液が固まった部分の木。この樹液が油分を含んでいます。なので昔の釜などは、油が釜についてしまうのを避けるため、白檀がつかわれることが多いです。
まとめ
私にとってお香が一番季節の移り変わりを感じます。
風炉の季節:初夏から初秋は白檀、沈香の香り、木の素材の香合
炉の季節:晩秋から晩春は練香の様々な香り、陶器の香合
香木か練香かにより香合の素材や、中に入れる香の数が変わります。なぜそうなのか理由と関連付けて覚えると忘れにくいです。
沈香は希少で高価です。人工的に香りをつけて偽造する詐欺も横行しているようです。
東南アジアに旅行に出かけた際、お土産で入手する場合は、目利きの方とご一緒に見に行ってください!