お稽古とは一般的に、自分が点前をしているところを先生に見ていただいて、間違っている箇所やちょっとした振る舞いを指摘してもらい、その事柄を次回にはできるように記録もしくは記憶する。です。よく指摘してもらえると上達が早くなるでしょうか?
例えば、茶道の稽古も英語のレッスンのように、先生一人、生徒一人のマンツーマンであるほうが、先生に見ていただく時間が長いです。茶道の稽古は生徒が少ない教室のほうがいいのでしょうか?
私は、マンツーマンよりもある程度の人数がいて、いろんな人のお点前が見られる環境のほうが上達すると思っています。この他の人のお点前を見て学ぶことを「見取り稽古」と言います。この「見取り稽古」が点前の上達への近道だと私は思っています。
今回は見取り稽古について書きたいと思います。これを読んでいただくと、見取り稽古のコツがわかります。
- 稽古の種類は2つ
- 見取り稽古は教本からでもできる
稽古の種類は2つ
私が考えている、茶道の稽古は2種類あります。
一つ目:
自分のお点前を先生に指摘してもらって、次のお点前で、よりいいお点前ができるように改善する。
二つ目:
自分以外の人のお点前を見て、いいところを取り入れ、よくないところを改善する
この二つ目のことを「見取り稽古」といいます。それは、他の人の点前を見て自分の稽古とすること。(説明しやすいように、一つ目のことを「お稽古」とします。)
この二つのお稽古では使う力が異なります。
お稽古で使う力:記憶力
お稽古では、教えてもらったことを次回そのまま再現する。言われた事がちゃんと再現できる。教えていただいたことを忘れないように、動きをや順番を覚え、メモしたり体で覚えたりして忘れないようにします。これも覚えなければいけないので、記憶力が必要です。点前の種類が多いと覚えることも多いので、大変です。
見取り稽古で使う力:観察力、客観的視点
観察力:よく見て
客観的視点:自分との違いを見つける。それを自分で真似できる
自分より先に進んでいる人のお点前を見て、自分に足りないことを学びます。自分より後に始めた人のお点前を見て、自分が忘れていないかを確認します。そして自分で見て良いと思ったことと、自分との違いを発見し、それを自分の中に取り入れていきます。稽古で自分の点前を指摘されることだけではなく、他の人の稽古でどんなところを指摘されているのかをよく見て、それが自分に当てはまるかどうかをちゃんと振り返ります。
見取り稽古をするには、他の人のことを細かく観察し、自分にはどこが足りないのか気づくために、いつも客観的に自分の事も観察することが必要です。
この「他の人のお点前を見て自分のお点前を改善できる」見取り稽古を真面目に取り組み始めた時に、自分のお茶のお点前が少し上達した感じがしました。
見取り稽古は、教本からでも学べる
そして見取り稽古は他人のお稽古を見ている時だけでなく、教本など本に出ている写真をよく観察することでも可能だと気づかせてもらいました。教本から学べばもっと上達できるのではと期待をしています。
私が教本で確認していることは、お点前の手順、やり方でした。しかし、写真で見取り稽古をすることも可能なんです。
教本は、写真と文でお点前の流れを説明しています。以前の私は、流れを知りたい為に、文章ばかり読んで、点前の様子を写した写真は、補足の資料だと考えていました。文字ばかりだと見る気がなくなるから入れている雑誌の写真のような感じです。なので、さっと写真を見て「ああ、この手順であってるのね」という確認するのみ。
しかし教本を見取り稽古として使う場合、
「写真の中の何が起こってるかをもっとよく見る」
ことが必要なんです。
なぜそれに気がついたかというと、3年前あるセミナーを受けに行った時でした。お点前の中で道具の持ち方を、先生に注意されてる人がいました。それに対してその先生が、
「教本で持ち方をよく見てごらん、正しい持ち方がわかるよ」
とおっしゃったことで気がつきました。指のどの関節の近くなのか、指が開いてるか開いてないか、などそういう細かいところも、教本には正しいことが載っています。順序が正しいのかだけを見るのではなく指の形、道具の置く位置そういうものを全部よく見て下さいと言っていました。
しかしながら、実際教本には「持ち方はこうです」「置く場所はここです」という指摘をする写真として載っていません。文章の補足説明として、ただ写真が紙面にあるだけです。だとしても、そこでも観察力を働かせて、写真から正しい形を学ぶ必要があったんです。
私はそういう気持ちで教本を見ていなかったので、本当に目が覚めた気持ちでした。
まとめ
今回は他人から学ぶことができる、見取り稽古について書きました。
覚えておくといいと思うのは、
教本からでも見取り稽古ができる
です。
見取り稽古は、一緒に稽古をしている仲間、または教本の写真からも稽古ができます。特に教本は、普段は習えないくらい上級の先生の見取り稽古ができることになりますね。じっくり観察をして自分の点前に取り入れていきたいです。
見取り稽古のことを書いていて、これは茶道の稽古だけなく他の習い事、スポーツまたは仕事のやりかたにも通じると感じました。「上手い人から仕事を見て盗む」のは昔から言われていますものね。
余談ですが。。以前素晴らしくプレゼンのうまい上司に同行してクライアントに行きました。実際にどのようにプレゼンをしているのか、見るのはとても参考になりました。パワーポイントのスライドだけを見てもわからない、実際にこのスライドをどういう風に話して説得力を持たせるのか、見れたのがとても勉強になったのを覚えています。また、プレゼンの順番が来るまで待機をしていたとき、どのように頭を整理して、気持ちを上げて行くのかその様子を見れたのも発見があったのを覚えています。これも見取り稽古だったんですね。