他の言語に訳しずらい日本語というのがあります。
代表的なのが、
「もったいない」
ですが、私がよく耳にしたのは
「しようがない」
です。
会社員のころ英語ネイティブのいる職場にいたころによく聞きました。イギリス人(日本人と結婚していて日本語もOK)が、
「That’s しようがない」「It’s しようがない」
と、英語の会話の中で言っていました。「なんでそこだけ日本語なの?」と聞いたら、「「しようがない」ってほんとうに便利な言葉だよね。英語だと無い」と言っていました。
このような、日本語だけど英語に「翻訳できない」言葉をお茶でよく見かけます。
一番に思いつくのは、
「お先に」
です。お茶をいただくときに、まだいただいていない人にむけて、あなたよりもお先にお茶をいただくことを失礼します。の意味で「お先に」と会釈をしてお茶を飲み始めます。
省略していると思われる言葉を全部言うと、「あなたよりもお先にお茶をいただくことを失礼します。」ですが、「お先に」で済ましています。(「お先に」だけではなく、「お先にいただきます」と言った方がいいという先生もいらっしゃいますが。。。)
「お先に」の英訳でよく聞くのは
Excuse me for going before you.
この英語を日本語にすると、「あなたより前で失礼します」ですが、「お先に」と日本語で言われたときに受ける気持ちと、なんか違うようなきがします。
私は中学生の時に茶道を始めているので、「お先に」はセリフとしてインプットしてしまいました。なぜ順番が決まっているのに「お先に」というのか?小さい時(中学生ではすでに大きいですが)には気にしていなかった言葉について考えてみました。
「お先に」の意味は、「ごめん、あなたよりも先で」ではない
このお先にを英語で説明するのは難しい。お客さんの順番も予め、きまっているのに、なぜ「お先に」が必要なのか、それがわからないと説明ができません。それを考えてみました。
茶室に入るときは、お客さんの順番は初めから決まっています。亭主(お招きしたホスト)側が順番を決めていることもありますし、茶室に入る前に、お客さんで相談して順番を決めています。
なので、お茶の飲める順番は決まっていて、その順番を待っていればお茶は飲めます。
でも、なんで「お先に」とするのか。
私は、「お先に」は「順番が次に来る、あなたのことを忘れていないよ。」という、場の調和のための言葉として使われているのではないかと思います。
お茶を飲む以外でも、茶室に入るとき、なにかを拝見するとき、順番どおりに動く際でも、ほぼ例外なく「お先に」と言います。「お先に」と言われたときどう感じるか。自分が言われたときは、「私のことを気遣ってくれている。」という、安心感に似た気持ちを感じます。言われた方も「どうぞ」というので、「お先に」を言った人もおなじような気持ちをもっていると思います。
茶室の中では、お茶についてのこと、季節の話をします。世間話はしません。亭主がお客さんを選んで招待していることが多いので、お客さん同士は初対面の場合もあります。
茶室の中で過ごす短い間に、初めて会うひとがいた場合、すぐにリラックスするのは難しいです。短い間でも、お茶室の中にいる間は、亭主とお客さん全員が、安心し、調和した、心地よい空間にしたいと思います。
その空間を作るのに、一役買っている言葉が「お先に」なのかもしれません。
なので、「お先に」の英訳は
「Excuse me for going before you.」
ですが、「お先に」の言葉が使われている意味とは、ちょっと違うかなと考えました。
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