茶道具の「銘」と、マーケティングの「ネーミング」との共通点を考える

茶道具には、たいてい、銘がついています。「なんで、道具に銘をつけるのかなー」と、最近考えていました。先日母の喜寿のお祝いでプレゼントした茶碗に銘が付いておらず、私が銘をつけてみようとおもったことが、始まりです。

銘の候補と決定。これは、よくよく考えてみると、マーケティングで使われる「ネーミング」と同じような性質がるのではないかと思いました。

「銘をつける意味」

「ネーミングのプロセス」

の共通点について私が思ったことを紹介したいとおもいます。

フリーランスになる前は、日系と外資系のブランディングエージェンシーに勤めていました。主に、シンボルマークやブランドガイドラインなどを作成していました。ネーミングの段階から関わるのも少なくなく、ネーミングの過程も経験してきました。その経験から2つの視点、

  • 銘とネーミングの機能の共通点
  • 銘とネーミングのイメージ戦略の共通点

で考えてみたいと思います。
経験談では、日本車のネーミングのプロジェクトが印象に残っているので、今回は、車のネーミングと茶道具の銘で共通点を探したいと思います。

銘とネーミングの機能の共通点

機能の共通点を検証する上で、
「名前、銘がついていることで便利になることはなんだろう。」
を考えたいと思います。


便利なことは、銘があることで、道具の特定ができる。です。

例えば「花」という銘の茶碗があって、それを倉庫から持ってきて欲しい時、銘があれば、

「あの”花”茶碗を持ってきて」

と言えます。しかし、銘がないと、

「あの色が白で花の絵が書いてある大きめな茶碗を持ってきて」

という正確な説明が必要です。道具が両手で数えられるくらいだったら正確な説明でもいいですが、たくさん道具が増えてくると説明も長くなり、同じような道具もあるので、なかなか不便になりそうです。
茶道具は同じようなものもたくさんあります。例えば茶杓も材質は竹が多く、そのちょっとしたフォルムの違いにこだわりがあり、素人目には同じようなものを多数そろえたりします。
その際に、いちいち形を覚えておいて倉庫から出すのも、所有者本人でも忘れそうです。
これを解決できるのが、銘でもあります。

でも、銘をわざわざつけなくても、「茶碗1、2、3・・・」と番号をつけていってもその機能は果たせますよね。


それで、思いついたのが、車の話です。外国の車では、車種をアルファベットと数字で表現しています。これも、素人目にはおなじような車をグレードや車種で区別できるようにしているものと思います。


共通点:初めて見る人にもわかりやすい区別、見つけやすくする機能

銘とネーミングのイメージ戦略の共通点

茶道具に、茶碗1、2、3といった数字を銘としてる人はいないと思います。(自分の倉庫の整理のためだったらあるとおもいますが。。)機能のみを望むのならそれでも十分です。


でも、なぜ、季語や禅語、道具が持つ由来からの「銘」をわざわざつけるのでしょうか。


私の経験談は日本車のネーミングです。日本車って「名前」がついているんですよね。(海外でもついているのもあると思いますが)
その車の時代感、形、用途、競合他社との差別化、を考えてネーミングを捻出していました。
この車にどういうイメージを持ってほしいか。

>お金持ちのステータスを表すのにふさわしいネーミング

>環境に負担をかけないことをアピールしたネーミング

>走るのが好きな人が所有したいとおもうパワーのありそうなネーミング

とか、そういうイメージ戦略をその時代に合わせて考えていたように思います。

お茶の話に戻りますが、お茶の有名な道具は500年ほど前に銘がつけられています。ですが、茶道具の銘のつけかたも案外、上記のような車のマーケティング戦略からのネーミングと同じだったのではないかな。


車のネーミングと同じように、

道具がどう観られたいか、ポジショニング、価格帯、他との差別化、とかを加味されてかんがえられていたのではないかな。


納得感があり、知的な銘が道具に与えられると、道具に銘が持つイメージ付加価値が与えられ、高く売れたかもしれません。そういうイメージ戦略の側面もあるのが、銘だったのかも。

共通点:時代感、ポジショニング、価格帯、他との差別化を加味されて決定される、イメージ戦略に思える

そんなことを思いました。







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