お直しして使う「金継ぎ」。英語でもそのまま「KINTSUGI」の日本の伝統技術。

金継ぎの茶碗をつかっています。黒の楽焼で、楽焼は低温で焼いた茶碗(低火度釉)なので、やわらかく割れやすいといわれます。

このお茶碗は、以前お世話になっていた先生から譲り受けたもので、当時はお稽古でつかっていました。お稽古で使っている時には、割れていなかったので、金継ぎはされていませんでした。お稽古で使っているうちに、茶杓や茶筅が同じところになんども当たり、ある日「ぱかっと」割れてしまった様です。金継ぎされてからは、お稽古には登場していませんでしたが、この茶碗を見ると、昔の先生を思い出します。

日常生活でつかう品は「1年使わなかったものは捨てる」をルールにして、あまり物に執着を持たないようにしています。しかし、物にまつわる思い出があるとなかなかそのルールも適用できません。

思い出が捨てられない=物が捨てられない

と、なりがちです。そのものの、壊れた時が物の捨て時だと思いますが、「金継ぎ」のおかけで、(そのタイミングを逃すというか、)大切に持ちづつけることができます。

金継ぎは「生まれ変わり」

金継ぎとは、漆と金粉でできています。漆を接着剤代わりにして、割れた器を貼り付け、最後の仕上げに金粉を使っています。今は、金継ぎと同じことが、樹脂でもできるようですが、昔からあるのは金粉と漆です。


「割れたものを修理する」というと、瞬間接着剤の CM みたいに、割れたところをが分からないようにして直す。「元どおりにする」のが一つの価値になっています。
「元どおり」とは反対に金継ぎは、割れたところがより目立ちます。器と同じような色の漆を作って、それでわからないように継いではいません。実際は、わからないように漆で継ぐ技術もあります。静嘉堂文庫に所蔵されている唐物茶入 付藻茄子のように。X線調査で継いでいたことがわかりました。(美術館で実物を拝見しましたが、表面はぜんぜんわからないくらいツルツルでした。)


金で継いだ金継ぎは、割れたところがどのように割れたのかよく見えます。元どおりに直すのではなく、目立たして別の価値を与える。「直した」ことでその茶碗の歴史の長さ、人が大事にしてきた、という思いを表現しているのではないかと思います。


茶碗の表面の見た目、釉薬のかかり具合や粘土の感じなどを「景色」といいます。金継ぎがされると、また違う景色になります。以前の景色は消えて、今度は違う景色をもつ器として、文字通り生まれ変わります。

英語で金継ぎを表現すると「KINTSUGI」

英語では、金継ぎは「KINTSUGI」です。そのまま表現されている日本古来の技術です。茶入れや、抹茶茶碗だけではなく、茶道具ではないお皿やまた、クリスタルグラス等でも修繕は可能です。以前、金継ぎされた飾り壺が外国のインテリアの一部として、美しく棚に飾られたのを見て驚きました。


数年前オーストラリアに旅行に行った時に、知り合いのお宅へお伺いする機会がありました。その方が特に「和風のインテリアが好き」には感じられませんでしたが、花瓶のような飾り壺に、金継ぎがされていました。
この方の家は、モノトーン基調で、家具以外ほとんど物がなく完璧な、ミニマムインテリア。その部屋の中に、金継ぎされた壺。そのコントラスとが素敵で、白、グレー、を基調にして、大理石の床の完璧なモダンインテリアに、一度壊れ、金継ぎされた壺。海外のインテリアにも似合うんだなーと、思って感心しました。


金継ぎの壺があることにより、さっぱりしている完璧な部屋に、完璧で無い部分の遊びが出る。歴史を背負って過去からやってきた、アンティークの家具にも似た存在感。そんな風に見えました。


金継ぎはお茶室の中でしか見たことがなかったですが、日常的な物も直して使ってみたいです。直したことにより、より美しくなるなんて、なんか素敵ですよね。直した分だけ多少は弱くなってしまうんですが、それで大切に扱われるのなら物も嬉しいんじゃないかな?と思います。


割れたこと、完璧じゃないもの、もその使い方によって、美しさを引き出すことができる。

私の持っている金継ぎ茶碗の、変わらない思い出と、生まれ変わった美しさを大事にしていきたいと思います。







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